民報印刷 さくらBOOK

歴史の陰の実力者、ジャガイモ!


『ジャガイモの世界史』

著者:伊藤章治
発行所:中央公論新社
2008年1月25日 初版
本体価格:840円+税

 作者は元新聞記者です。足尾鉱毒事件を調べる中で、被害者がじゃがいもを栽培して命をつないでいたというところからジャガイモがただ者ではないと考えました。その後、自身の叔母の経験や姉の記憶にもジャガイモが深く関係していたため、ジャガイモを探す旅に出ました。本書では、ペルー、アイルランド、ドイツ、ロシアなどを取材したエピソードとともに、ジャガイモが歴史と世界を駆け抜けた記録を振り返ります。
 南アメリカの国、ペルーのティティカカ湖のほとりで生まれたジャガイモは、気温が低い高地でも育つため、古代インカ帝国のマチュ・ピチュで貴重な食料とされました。その後、ヨーロッパのキリスト教文化圏では当時の色や形の悪さから疫病の原因との迷信が広がり、「聖書に出てこない食物は、神の罰が下る」として偏見を受けます。しかし、革命や戦争が引き起こす飢饉を救ったのも「貧者のパン」ジャガイモでした。
 日本にジャガイモが登場したのは、ジャカルタから長崎に輸入された「爪哇芋(ジャワイモ)」が最初でした。しかし、ジャガイモの生育適温は10〜23度で、温暖な長崎では品種改良が必須でした。異なる品種を受粉させるため、成熟の早い品種と遅い品種の開花時期を重ねる必要があります。照明をあてて長生きさせるなどの工夫を凝らしました。
新しい品種が生まれるのは、50万個の種子からたったひとつ。気の遠くなるような努力の末に、ジャガイモは日本に浸透したのでした。
 普段何気なく食べているジャガイモ。世界を救ってきた小さな芋は、今も私たちのお腹を満たしています。

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